俺が高校1年生にあがったころはバレー漬けの毎日でマネージャー業が忙しかったが充実している日々だった。土曜日の練習や合宿で遅く帰ってくることも多かった。その代わりに日曜日に夏と飛雄がひっついて離れなくなるのでそれもそれで大変だった。オレが中1の時にバレーボールを始めた影響で飛雄も始めた、とおばさんから聞いた。あいつになら向いているかもしれない。同年代の男子たちよりも少し大きい130cm代。オレが小2の頃の周りは120cm代が多かったのに、あいつはにょきにょきと成長している。生まれた時はあんなに小さかったのに。

「しょーよー!バレーしようぜ!」
「おーいいぞー。じゃあ公園行こうなー」

夏も連れて、両手に夏と飛雄の手を繋いで公園に行く。帽子も被せてあるから夕方の日射し対策もばっちりだ。アンダートスを繰り返して3人でボールを飛ばす。夏がトイレに行きたいと言い出したのでトイレに連れて行く。飛雄を連れて行くのも忘れずに夏が出てくるまで待つ。飛雄はボールを投げて遊んでいたがそれに飽きたのかオレの隣に座ってきた。

「しょーよー!オレらショウライけっこんするんだからそろそろつきあうぞ、いいな!」
「え・・・お、おう」
「よし!」

きゅっと握られた手は遊んでいたせいで熱くて、でもまだオレの手よりかは一回り小さかった。赤ちゃんの頃は指しか握れなかったのに。やがてトイレから出てきた夏と3人で家に変える。もう夕焼け小焼けの歌も流れていたから帰らないと。繋がった影がものすごく伸びていてオレら3人は影でも遊んでから家についた。

夕食のテーブルで飛雄が恋人になるぞ、という事を話したら夏は本気にして嫌だと駄々をこねるし、お母さんもお父さんも笑いすぎてご飯が終わりそうになかった。しょうがないから夏と風呂に入って寝かしつけた。宿題を片付けないと。数学の宿題を片付け始めればもう脳内はいろんな公式や数字で埋め尽くされて恋人宣言をした飛雄のことなんてもう脳内になかった。宿題を片付けないとやばい。補習などになって合宿に行けなかったら困る。マネージャーが赤点の補習で合宿に参加できないなんて聞いたことがない。必死に何もわからないながらもプリントに向き合って終わらせる。寝る頃にはもう数学のプリントの疲れしかなくっておやすみ3秒だった。

意外とすぐに忘れてるんだろうなーと思っていたのだが、飛雄は小2の時の約束、というか恋人宣言を忘れていないらしく、小学校高学年になってもコイビトなんだから手をつなごう、だとか、ファーストキスをかっさらっていったのも飛雄である。飛雄の小学校の卒業式のために大学から急いで体育館に向かっておばさんの隣に座った。卒業式にこい、と我が儘を言ったのは飛雄で、夏も同じ学校に通ってるから行くか、とそんな軽い気持ちだった。夏はクラスメイトと少し話しているみたいでオレは飛雄と話していた。おばさんたちはおばさんたちで何か話しているみたいで、オレは飛雄に引っ張られるままに桜の木のところへ連れて行かれた。後で夏に聞けば学校の告白スポットらしく、そこでキスをすれば恋が叶う、というものらしかった。オレの学校にもあったなーと思っていると顔を真っ赤にさせた飛雄は好きだ!と言うと俺のファーストキスを奪っていった。それは飛雄が小6、オレが大学2年生の時の話だった。