飛雄も無事20歳になってお酒も飲める歳になった。初めて会ったときは3歳でオレよりも小さかったのに今では見上げるくらいだ。高校生の時でもう190近くて、30cm以上の差がある。モデルみたいに綺麗で真っ直ぐな足とぴしっと伸びている姿勢、切れ長の目、サラサラな黒髪。どこからどうみてもイケメンだ。飛雄をこうやってお酒を飲むなんて、と思いながら飛雄の誕生日にオレの好きな赤ワインを空けた。意外とお酒に弱いらしく、すぐに顔を赤くしてふにゃふにゃになったので飛雄に3杯まで、と注意する。バレー部の飲み会に誘われても、家でも、3杯までの約束をきっちり守っているみたいで、部の飲み会に迎えに行くと少しふわふわとしている雰囲気ではあるがどちらかと言うと意識ははっきりとしている。
「しょーよー、迎えサンキュ」
「大丈夫、ほら、シートベルト」
「つけた」
「じゃあ行くぞー」
少し舌っ足らずなのが可愛い。そして少し幼くなる口調がとても可愛い。とても成人して、190cmの男とは思えないけれど可愛く見えるのも愛なのだろう。
年が明けて、オレが通っていた烏野バレー部の同窓会のハガキが届いた。今でも先輩たちや後輩たちとは連絡をとっていて、中でもよく可愛がってもらっていた大地さんとスガさんは頻繁に連絡をとっている。オレが結婚する少し前にハガキが届いてなんだろうと思って裏を見れば子供が生まれたとの報告があった。3人で写っている写真はとても幸せそうで、特に大地さんは嬉しそうに笑っていたのが印象的だった。いつかオレにもこういう時がくるのだろうか。
「飛雄、来月に同窓会があるんだけど、お前も行く?」
「俺が行ってもいいのか?」
「バレー部のだから、いいと思う。メッセージ欄のところに書いておけば大丈夫だろ」
「・・・じゃあ行く」
「出席で返事しとくな!!」
嬉しくなってハガキを取り出して出席、と丸を付ける。ついでにカレンダーにも書いて忘れないようにハガキを玄関に置いておく。出勤するついでにポストに入れよう。
それからオレも飛雄も忙しくてすっかり忘れていたがカレンダーを新しい月にめくった時に思い出した。バレー部の同窓会だ。コーチも顧問も来るらしい。今ではオレが当時のコーチの年齢である。年月が過ぎるのはとても早い。オレの誕生日にプレゼントしてくれたワンピースを着て、メイクもいつもよりかはプライベートらしく、髪の毛は適当にお団子にした。そんなにかしこまった席でもないし、今度は飛雄に何を着せるか悩む。散々悩んだ結果飛雄にはVネックのシンプルな黒いTシャツにジャケットと濃紺のジーンズを合わせる。シンプルだけど、飛雄がかっこよく見えるのはこういう飾り気のない洋服だと思う。長い手足が強調されて、色も相まって大人っぽく見える。
「うん、かっこいい!」
「翔陽も綺麗、だな」
「ありがとな!」
ショートブーツと合わせてコートを着る。多分おかしくないだろう。飛雄もコートを着込んで一緒に家を出る。相変わらず手は離れなくて、まだ甘えん坊なところは直っていないのかと思う。
借りた会場には既に何人か見知った顔が集まっていて、あちこちから声が掛かる。飛雄を紹介すれば冷やかす声があがる。よくこんなイケメン捕まえたなーという声にはオレが捕まりました!と返事をする。そうすると飛雄は嬉しそうに俺の腰を優しく抱きしめる。やっぱり照れる。
「日向!?」
「スガさん!お久しぶりです!!」
「おーおー、久しぶりだべ!あ、今は影山、だっけ?」
「日向でいいですよ?呼びやすいほうで」
「いんや、影山で!というか俺も菅原じゃないんだぞー」
「あ、そっか!澤村、さん?」
「やっぱり慣れないかー」
スガさんに飛雄を紹介する。昔と変わらない笑顔で俺の頭を撫でてくるのは嬉しい。大地さんも少し遅れてやってくるそうだ。なんでも大地さんの両親に子供を預けるみたいで、少しぐずってるから大地さんがなんとかギリギリまで一緒にいるらしい。
昔と変わらない面々から撫でられて、でも飛雄はオレの傍から離れることはない。少し不服そうに口を尖らせているから誰もいなくなった隙に唇を摘んだ。やっぱり先輩たちもいるからそんな顔をするな、と摘む。代わりに抱きしめ返せば一気に嬉しそうな空気を醸し出すのには少し笑ってしまった。単純なところも昔から変わっていない。
コーチの烏養さんと顧問の武ちゃんにも声をかければ結婚おめでとう、という言葉と烏養さんからは俺より先に結婚しやがって、という言葉をもらった。まだ結婚できていないようで、既に結婚した嶋田さんにからかわれていた。滝ノ上さんも結婚を控えているようで烏養さんはさらに落ち込んでいた。一番ビックリしたのは同じマネージャーだった潔子さんと田中さんが結婚していたことだった。嬉しそうにしている潔子さんにおめでとうございます、と言えば俺にも同じ言葉が帰って来た。無表情ではあるけれど嬉しそうにしている潔子さんを見て、高校の時も満更ではなかったのかな、と思う。あとは縁下さんが田中さんのお姉さん、冴子さんと結婚していたのにもびっくりした。先輩たちがオレの知っている人と結婚するというのは何とも不思議だけど、オレも嬉しくなってくる。あとは一つ下のマネージャーだったやっちゃんが山口と付き合っているそうだ。時間とは何とも恐ろしい。
楽しい時間が過ぎるのはとても早い。大地さんもスガさんも子供がいるし、結婚しているカップルも多いから早めにお開きにしよう、ということになった。オレもお酒を飲んですごくいい気分である。飛雄も一杯だけ飲んだみたいで耳が赤くなっている。酔っ払いや残業終わりのサラリーマンやカップルが目立つ駅のホームで電車を待つ。オレがあちこちで先輩たちに頭を撫でてもらったりしているのが不服だったのか少し不機嫌そうな顔をしていたけど、みんながオレのことを影山、と呼ぶ度に嬉しそうにしていた。今日は飛雄の表情筋がとても忙しそうだったのが一番面白いことだろう。
「飛雄、楽しかった?」
「・・・まぁ・・・」
「はっきりしねえなー」
「いい先輩たちだな」
「だろ?だから会わせたかったんだー」
そう言うと飛雄は嬉しそうに俺の手をぎゅっと握り締めた。冷たい冬の空気とは裏腹に所謂子供体温の飛雄の手はオレの心までポカポカにしてくれる。さあ、早く家に帰ろう。今日は特別に一緒に風呂入ってあげる。そして一緒に抱き合いながらベッドで二人仲良く寝よう。
まさ様より、『女体化日向受け落描き2』で描いてた粘着系男子飛雄ちゃんな年の差影日♀の続きを描いていただきました!
前回のお話はこちらです。『明日も、あさって、ずっと、ずっと、大好き』
ふっへへへ可愛い……飛雄が翔ちゃん好き過ぎて可愛い……!
防犯に対してめっちゃ厳しい飛雄ちゃんが可愛いです。まぁ翔ちゃんのセコムは飛雄ちゃんなんで防犯ばっちりですけどね!
私が落描き描いた時点ではくっつくまでしか妄想していなかったので、まさ様に新婚影日ちゃん描いていただけて天にも昇る気持ちです……かわいい……!
既婚者だからと告白断ったり、翔ちゃんが「影山」って呼ばれる度に喜んじゃう飛雄ちゃんが可愛すぎました。
影日ちゃん末永く幸せにね!
まさ様はpixivで素敵な小説を書いていますので、他の作品も見てみたい方はコチラからどうぞ。
まさ様、可愛い新婚影日ちゃんをありがとうございました!