飛雄が大学2年生になってからは告白とかで呼び出されることが多い、と飛雄が逐一オレに報告してくる。浮気は特に疑っていない(それこそ飛雄が3歳のころから好きだ、と言われ続けてきたから)のだが、それでも飛雄はちゃんと報告しては結婚してるからと断った、ということまで言ってくる。何度も報告しなくていいのに、と言っているが飛雄はそれでも報告してくる。隠し事が嫌いな性格もわかっているから、今では好きなようにさせている。夏休みに入る前は遊びに行きましょうとかそういう誘いが増えて嫌だ、と言っていた。だからポークカレーを作ってやって、あと温玉も初めて作った。少し茹ですぎてしまったがそれでも飛雄は美味しいと言っておかわりもしてくれた。
「もう、告白されるのめんどくさい」
「それ、去年も言ってたよな?」
「むしろ翔陽を大学に連れていけば・・・でも他の奴が翔陽に惚れるかもしれないし・・・うぅぅ・・・」
「いや、それはないからな?オレも飛雄のこと好きだから、それはないからな?」
「!!」
お風呂のあとのまったりタイムでは飛雄が離れてくれなくて、トイレに行くにもドアの目の前で待たれてすごい困った。まだ肌だって重ねていないのにこんな羞恥プレイはありえない。少し拗ねた様子を見せればもうしなくなった。
「噂で広がりそうなもんだけどな、お前が結婚してるって」
「・・・そういうもんなのか?」
「女子のネットワークは怖えぞ。内緒話は内緒話じゃないからな。むしろ筒抜けだから」
「・・・女子って怖ええ」
「大体そういうもんらしいけど、オレはよくわからない。だから広がっても良さそうなのに。なんでだろうな?」
「うーん・・・」
「うーん・・・」
二人でこうして考えても大して理由が浮かばない。まあ浮気することはないから別にいいだろう。飛雄には少しかわいそうだけど、これからも告白を断ってもらおう。ここまできたらそれが一番手っ取り早い気がする。
「こうなったらクリスマスとか、バレンタインとか大変だな」
「あー・・・」
「特にお前、誕生日がクリスマス近いから大変そうだな!」
「確かに・・・」
「頑張れよー」
「おす・・・」
しょぼん、と落ち込んで見えた飛雄にキスをしてベッドに潜り込む。抱きついてくるのは引っ越してきたときから変わらない。こうやってオレを抱きしめて寝るとよく寝れるそうだ。起きる時に、足まで巻きついているからオレが起きるのが大変だけど。
冬休みに入る前、まだ飛雄の誕生日も来てないのにクリスマスや誕生日の日にデートの誘いが多かった。やっぱり1年生らしい女子たちかららしく、その度に断ってる、という報告が増えた。疲れきった様子で抱きついてきた飛雄はレの肩に顔をグリグリと押し付けていてサラサラの黒髪がくすぐったい。
「飛雄、お疲れさま」
「ん」
綺麗な丸い頭を撫でてサラサラの髪の毛を堪能する。指に一切絡むことなく逃げていく黒髪は艶々で昔から変わっていない髪型が愛おしい。もう少し変えればいいと思うけど多分変えたら変えたで一気にイケメンに見えるはずに違いないから今はまだこのままがいい。
誕生日には頑張ってケーキを作って、プレゼントもあげた。飛雄が欲しがっていた有名スポーツブランドのシューズを買った。目をキラキラとさせている飛雄はとても可愛くて19歳とは思えない。小さい頃から誕生日とクリスマスが一緒だったから別々にしてあげようと思う。オレも覚悟が決まったから今年のクリスマスはより一層特別なものになるだろう。オレにとっても、飛雄にとっても。
24日は思いのほかすぐにやってきた。飛雄が好きなポークカレーと最初のころから比べてだいぶ慣れた温玉を茹でる。いつも通りおかわりをして、お風呂に交互に入る。先に飛雄を風呂に入れて、その間に洗い物をする。時間があれば作るお昼のお弁当も夕食も綺麗に食べてくれるからすっごい嬉しい。
風呂に入ってこの日のために買った下着を身につける。普段は風呂から上がったらブラジャーは着ないけど、お揃いだから上下ともに身につける。パジャマを着てリビングに行けばバラエティを見てる飛雄の頭が見える。どうもバレーの話題みたいで、相変わらずだなぁと思いながら隣に座る。
「飛雄、」
「?」
「明日だな、クリスマス」
「だけど、休みだよな?」
「うん」
「??」
「あのね、早いけど、クリスマスプレゼント、あげるから」
「へ?俺、何も用意してない・・・」
「いいの、だから」
テレビを消してキスをすれば抱きしめられる。ブラジャーの感触が伝わったのか不思議そうな顔をしている。そして真っ赤になったオレの顔を見ればどういう事なのかわかったのか首まで真っ赤になった飛雄に寝室に連れ込まれる。ベッドに寝転んで、キスをしながらお互いの体温を感じる。上下お揃いの下着が気に入ったのかしばらく脱がされることはなかった。でもすぐに脱がされて、やっと一番近いところに飛雄を感じることができた。
素肌同士が触れ合うのが不思議でオレは目が覚めた。けど、昨日のことを思い出してオレは思わず飛雄の裸の胸に顔を埋める。恥ずかしいし、痛いしで大変だった。けれどすごい満たされるものがあった。オレの初めてを全て捧げてもう何も残っていない。初めて手を繋ぐのだって、キスだって、恋人になるのだって飛雄が初めてだ。これだけ他に見向きしないオレも結構一途だな、と思っていると飛雄がゆっくりと起きだした。ぎゅううう、と抱きしめられて二人でクスクス笑う。そんな寒いクリスマスの朝はとてもキラキラしていた。