トサチビ・公園デート

 それは突然だった。

 いつも通りの休日。部活がない為宿題に手をつけるが、結果できないまま終わる、そんな日常。明日月島に見せてもらえば良いかな、なんて呑気に考える。問題はこの暇な時間をどう過ごすだが…
 いつも通り影山ん所に行って、トスを上げてもらおうか。マネージャーではあるものの、中学までバレーをプレーしていた身だ。いつもウズウズしていて、よく影山にトスをねだるのだ。
 早速影山に電話しようとしたが、それは叶わなかった。何故なら、家のインターホンが鳴ったから。今家には誰もいなかった為、仕方なく出ることにした。
 いったい誰だろう。まあせいぜい宅配便か何かだろう。そう結論付けた日向は、玄関に置いてある印鑑を取り、扉を開けた。そして相手の顔を見るなり、印鑑を手から落としてしまった。でもそれを、まるでいつものレシーブのように、しなやかにキャッチした。

「はいよ、チビちゃん」

 そう言って日向の手に握らせた。彼女に握らせた人は、日向の大好きな恋人、

「く… く、くろお…さん!?」

 黒尾鉄郎であった。

 ***

「にしても驚きましたっと」
「そりゃチビちゃ…よいしょっ、チビちゃんに会いたかったし」

 レシーブの最中故に、会話の中に「ほっ」とか「よいしょっ」など掛け声らしきものが混ざっている。

 日向は、二日ほど前だったか、その時に「会いたい」と言いかけたことがあった。勿論日向も多少子供っぽいところがあろうが高校生。東京に住んでいる黒尾と、宮城に住んでいる日向は遠距離恋愛ということで、簡単に会えないということくらい解っていた。でもやはり寂しくて…、そんな気持ちを汲み取ってくれたのか、黒尾は電車やバスを乗り換えて行かなくてはならないほどの距離を来てくれた。本当に黒尾はそういうところはマメだと思う。日向は、不安にさせないようにしてくれている黒尾の行動は、申し訳ないと思いつつも嬉しいのだ。

「でもすごくうれし…パギャ!」
「うわ、チビちゃん大丈夫か?」
「は、はい…」

 オーバーをしようとしたのだが、手と手の間が開きすぎてしまい、ボールが顔面にヒットしてしまった。どうしたらそうなるのか全く解らないのだが、やっぱり一緒にいて飽きない、黒尾はそう思った。
 ここは日向の家からバスで十分程で着く、敷地が広い公園だ。ボール遊びなどが許可されている芝生の上で、レシーブ練していたのだが、日向の顔面ヒットで中断した。顔を冷やすため、水道場に行ったのだが、そこの途中に、花がたくさんあるのを見つけた。近寄って見ると、葉の付け根から花柄を伸ばし、白い小花を密集させている。間違いない、シロツメクサだ。

「黒尾さん見てください! シロツメクサ!!」
「シロツメクサ…?」
「え、知らないんですか!?」

 シロツメクサを知らない程まで東京にはそれがないのだろうか。都会はもう少し自然を大切にすべきだ。

「そうだ、花冠作りません?」

 小さい頃から妹の夏と一緒に作っていたため、手慣れた様子で花冠を作っていく。最初はぎこちない手つきだった黒尾も手先が器用なのか、日向に教えてもらいつつも、最後は綺麗に完成させた。

「おお! 黒尾さんこれで初めてなんて、スゴいです!」
「まあ闇の力を持ってすれば、こんなもの余裕だな」
「うおおおお!! 闇の力! かっけぇ! おれも使いたい!」
「チビちゃんはダメー」
「えー!?」

 ケチーと頬を膨らます日向が可愛い。拗ねる日向の頭をわしゃわしゃ撫でる。猫っ毛でツンツンした見た目のわりに、触るとふわふわしていて気持ちいい。「腹減ったか?」と訊くと頷くので、用意していた弁当を取り出した。中身は-

「黒尾さん、何ですか? これ」
「ん? パニーニ」

 ほらよ、と渡されたパニーニを口に入れる。味を確かめるかのように、ゆっくりと咀嚼して飲み込んだ。黒尾が味を訊くと「美味しい!」と、顔を上げて笑った。

「にしても黒尾さん、料理上手なんですね!」
「まあ、研磨に作ったりするからな。俺的にはチビちゃんの料理も食べてぇけどな」
「じゃあ、また会った時にピクニック行きましょう! 味の保証はしませんけど、次はおれが作ってきます!」
「じゃ、約束な」
「はい!」

 小指を絡ませて約束、と笑う。次に会うの楽しみだな、日向はひそかにそう思った。

飛翔さまより、『うちの日向受けについて』で描いてた研日・トサチビの設定を使った小説を書いていただきました!
可愛い! にょたひなちゃん可愛い! 研日ちゃんとトサチビ可愛い!!
アルパカ系男子な研磨や深刻な中二病を患っているパニ尾さんが素敵です(笑)
私が落描きしたものより二人が良い男になってて惚れ直しました。
サプライズ演出がどちらも素敵でこんなん翔ちゃん惚れ直すしかない……流石シティーボーイやで東京すげぇ……
可愛いお話に使っていただけて嬉しいです、ありがとうございました!

飛翔さまはpixivで素敵な小説を書いていますので、他の作品も見てみたい方はコチラからどうぞ。
今回のデート話の音駒編以外も見れますよ!
飛翔さま、落描きネタ使用していただきまして、ありがとうございました!

2014/9/30